歯科衛生士の現場から
病院・大学病院
病院歯科に勤務する歯科衛生士として
大屋 朋子さん 東京歯科大学市川総合病院 コ・デンタル部 千葉県歯科衛生士会
私の勤務する東京歯科大学市川総合病院は千葉県の市川市にあります。診療科は26科、病床数は560床を有する地域中核医療機関です。また、口腔がんセンターや脳卒中センター、腎移植センターなど、さまざまなセンターを有しています。当院は、周術期口腔機能管理や摂食・嚥下リハビリテーションなど、歯科大学を母体とする総合病院の強みを活かし、医科と歯科の医療連携が充実していることが特徴です。
病院のなかに歯科診療棟があり、歯科・口腔外科はユニット数が22台、歯科専用の手術室も完備しています。また、口腔がんセンターも併設しており、常駐の歯科医師・歯科衛生士が口腔がんに特化した治療やサポートを行っています。
私たち、歯科衛生士はコ・デンタル部に所属し、歯科・口腔外科だけでなく、さまざまな場所で多職種と連携を取りながら口腔健康管理をメインに従事しています。
歯科・口腔外科外来では、歯科診療の補助、口腔外科手術の準備・補助、歯科保健指導などに加え、術前術後の口腔衛生管理や全身疾患を有する患者さんに対して口腔健康管理も行います。その際に、他科の医師と連携しながら、口腔健康管理を行うこともあります。
入院病棟では、意識レベルの低い患者や集中治療室に入院している患者などに対し、誤嚥性肺炎予防などを目的に口腔清掃や摂食嚥下リハビリテーションなどの口腔健康管理を行っています。集中治療室(ICU)などでも、人工呼吸器が装着された患者さんに対し、口腔の衛生管理を行っています。ときには、看護師や患者家族に口腔ケアの指導を行うこともあります。入院患者の口腔内をマネジメントすることは歯科衛生士の重要な業務の一つです。
また、総合病院の歯科衛生士は、近年、周術期口腔機能管理で大きな役割を果たしています。周術期口腔機能管理では、がんなどの治療を受ける患者に対し、口腔健康管理を行うことにより、手術後の合併症や、薬物治療や放射線治療時の口腔合併症を減少させる効果があることが報告されています。周術期口腔機能管理は、がん治療の『支持療法』として、その役割はとても大きいです。当院も、地域がん診療連携拠点病院に指定されているため、多くのがん患者さんが来院され、患者さんそれぞれに応じた口腔健康管理を行っています。口腔を通して、がんなどの原疾患の治療がスムーズに進むように支えることで、患者さんのQOL向上に寄与しています。
院内では、栄養サポートチーム(NST)や呼吸サポートチーム(RST)、骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)といったチーム医療にも積極的に参画し、多職種と協働しながら、患者さんのサポートを行っています。他職種に対し、チームの中で口腔ケアなどの勉強会を開催し、口腔ケアを多職種で行っていけるよう指導も行い、口腔のスペシャリストとしての役割を果たしています。
私は総合病院で働くなかで、チーム医療を通して、多職種と密に関わったことで、自分の知識や見解を広げることができたことが、自身の成長に大きくつながったと思います。多職種と協働するときには、歯科の知識はもちろんですが、医科の知識も他職種と同等に必要です。働き始めたころは、全身に関する知識が乏しかったために、毎日が知らないことの連続でした。知識が増えていっても、日々変化する医療に対応するため、さらに知識のアップデートも必要になり、大変さを感じることもあります。それでもこの仕事を続けられるのは、多職種で支援した患者さんが少しでも食べられるようになったり、口腔環境が改善された時などにやりがいを感じるからだと思います。
今後は、病院内だけでははなく、患者さんが施設や自宅に戻ったとしても、口腔内環境を維持・向上できるシステムを作っていくことが、私たちの役目だと感じています。地域の医院や歯科医院と協働しながら、シームレスに患者さんをサポートできるよう日々努力していきたいと思います。